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森鴎外の名作『高瀬舟』の舞台・高瀬川に沈んでいる「思い」とは…?
2007/07/27
 夏目漱石と並ぶ、明治の文豪・森鴎外の代表作の1つといえば歴史小説『高瀬舟』です。

 この物語の舞台になった高瀬川は、もともとは江戸時代初期に豪商・角倉了以が物資を流通させるために開いた運河でした。およそ300年の間、京都・伏見間の水運の大動脈として重宝されていたようです。現在では、鴨川において京都側と伏見側に分断されています。

 徳川幕府の時代、島流しになる京都の罪人はこの川筋を上下する小舟・高瀬舟で大阪へ送られました。ある日、弟を殺した喜助という男が高瀬舟に乗せられますが、他の罪人には見ることのない晴れやかな顔をしています。護送を命じられ一緒に乗り込んだ警護役の庄兵衛が不振に思い、彼に尋ねるとそこには考えさせられてしまう意外な理由があり…。

 この物語で、鴎外がメインテーマとしているのは、「財産と欲望の関係」と「安楽死について」の2つです。庄兵衛は、「慾(よく)のないこと、足ることを知っている」喜助に感嘆し、そしてやむを得なく「殺人犯」になってしまった彼の境遇にどうしても腑に落ちないものを感じます。鴎外がこの小説で投げかけた「安楽死は是か非か」という疑問は、この小説が発表されて90年以上たった今でも、新聞やニュースで繰り返し報じられる大きな社会問題となっています。

 「知恩院の桜が入相の鐘に散る春の夕(ゆうべ)」に高瀬舟に乗ってきた喜助と、役人の庄兵衛。物語の最後は、「次第に更けて行く朧夜(おぼろよ)に、沈黙の人二人を載せた高瀬舟は、黒い水の面(おもて)をすべって行った」としめられています。この時間の流れの中で庄兵衛は様々なことを思いますが、結局はうやむやのまま彼の思いも暗い闇に封じたのではないでしょうか。

 現在は喜助が舟から見た景色とは様変わりしているでしょうが、江戸時代、高瀬舟が乗せていた色々な思いを想像しながら、川沿いの木屋町通を歩いてみるのもいいかもしれません。ただし、三条、四条あたりではお店が多すぎて寄り道必至でしょう…!

(データ)
●森鴎外/もりおうがい(1862−1922)
 『舞姫』『うたかたの記』『雁』『ヰタ・セクスアリス』『阿部一族』『山椒大夫』など
●高瀬川
 二条あたりから木屋町通沿いの西側を南下し、十条通の上流で鴨川に合流する。三条・四条あたりに多くの飲食店が並び、歓楽街であると同時に桜の名所にもなっている。
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